シルバーレイン(TW2)にて活動中・朱鷺村伊鳥とその弟分と隊長のブログ
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読後感がひどい気がしてたまらない場所で区切ります。
あといっかいだけつづくのぜ。
(……ああ、これは。)
人間の生き方ではない、と。吸血鬼たる少年は思った。
この世界を覆う『世界結界』は、吸血鬼たちを含む生まれながらに力を持つ来訪者と呼ばれる者たちにとってあまりにも酷な存在だった。
加齢による思考の硬化と有する力とが結界によって反発して齎される『見えざる狂気』。
人間とは異なり、生まれ落ちた時点で既に能力者である来訪者は生きている限り必ず狂気に陥る時を迎えねばならない。
ゆえに吸血鬼は狂気が発症する前に自らを棺に封じ、命の時が止まるまで、目覚めぬ長い眠りにつくのだ。
人間社会に紛れたる吸血軍人の血統、ブラッドレイ家がロンドンのウェストミンスターに構える邸宅は、その半分以上が棺で眠る者たちのためのものだ。
家長であった父がそこに加わった今、家の中で生活しているのはそれを継いだ長男と、その弟――フェイト=ブラッドレイの二人だけとなっていた。
彼ら兄弟の仲は、酷く悪かった。
兄の言動、思想、思考の悉くがフェイトのそれとは相容れないものだ。
彼を是とすれば、フェイトは何一つ満足できない。兄もまた、フェイトの言動、思想、思考全てに不満と苛立ちを示す。
幼い頃からそうであったから、辛うじて二人を繋いでいた父が眠りについた後はもう言葉を交わすことも稀であった。
家を継いだ後の兄は自宅にいる時間が長く、それ故にフェイトは彼と顔を合わせる事を厭うて一日中、ともすれば数日、数週間帰らなくなる。
フェイトが敬愛する祖父と縁深い軍人、インデックスの元へ足繁く赴くことになったのも、元々は近くにいるだけで苛立ちを覚える兄から、兄がいる家から離れたがっての事だった。
そうして交流を深めるうちに、インデックスはフェイトにとって血の繋がりのある兄などよりもずっと親しく慕わしい相手になっていったのだが。
その日も、フェイトは自宅を出て、ソーホーの繁華街を歩いていたのだ。特に用はなく、強いて言うならば街を行く人間たちを観察しながら。
そうして、彼は「それ」を見つけた。
薄い金髪の、フェイトよりも幾分幼く見える少年。着ている物は随分と粗末で、恐らくは浮浪児なのだろう。
その少年は昼間の大通り、人の大勢行き交う真ん前で、パン屋から売り物のパンを数個盗んでいった。
――誰にも見咎められる事無く、そこにいた誰も、店主も直ぐ横にいた客さえもそれに気づく様子もなく。
けれど離れた場所にいたフェイトにさえそれは盗んでいったのだとよくわかる、あまりにも稚拙なやり方で。
まるで彼の事を、フェイト以外の誰も見えなかったかのように。
吸血鬼ではない、人間の能力者の中にそんな力を持つ者がいる事をフェイトはインデックスから聞いて知っていた。
過去にインデックスがフェイトの祖父である吸血軍曹の戦いに居合わせた時、風を操る兵士や刀剣の技を使う兵士の中に「己の姿を、力を持たない者から隠す能力」を持つ者がいた、と。
力を持たない人間であるインデックスはその姿を全く認識できず、しかし祖父やその他の力を持つ傭兵たちはその姿をはっきり捉えていたのだと言う。
恐らくは今フェイトが見た少年もそのどちらかなのだろう。
確かに姿を隠す力は、盗みを働くには有り難いものに違いない。
そして少年がそれによって今日を生きているのであろう事はその身なりから見て取れた。
それを察する事が出来るほどには、フェイトは年に見合わず世間擦れしてしまっていた。
(そう、頭で理解することはできますが……やはり、気に入りません)
気に入らない。その、卑しさが。
その為の力があるのならば、別の方法で以てしても、生きる事は可能なのだ。
たとえばそれが強盗や人殺しであろうとも。それは人間の知能によって、相手を選別して行われる行為だ。
食べ物を持って逃げるだけなら、野良犬にだって出来るのだから。
そんな、ただ自分が気に入らないという理由で。正義感でも何でもなく、フェイトは少年を追っていた。
辿り着いた先は、薄汚れた路地裏だった。
フェイトを舐めつける剣呑な視線は、その路地裏を根城としているのだろう少年少女たちの黒い瞳。
ヨーロッパ最大の規模を持つソーホーのチャイナタウン、そこから転がり出たのだろう。
華やかな街の裏に必ず存在する、光を受けた影のような子供たち。
みな一様に東洋人特有の黒い髪と黒い目、黄色味の強い肌をしていて――数歩後ろで取り残されたように立つ少年の金色の髪は、そんな彼らの中で異彩を放っていた。
先ほどの、店先からパンを盗んで逃げていった少年だ。
彼が抱えて来たパンを奪い合うようにして確保し、しかし彼らはそれを運んできた少年自身にはその奪い合いの権利さえ与えようとしていなかった。
――人間は「自分たちと違うもの」を基本的には許容しない。
ヒトと同じ精神構造を持つ来訪者、吸血鬼たちにも「敵」と見做す異なる来訪者種族が存在しているし、己の在り方を巡って同じ吸血鬼の中にも大きく二つに分かれる派閥が存在している。
来訪者の存在を永き忘却の彼方に消し去った後も、人間は同じ種族同士で争う歴史を紡ぎ続けて来た。だからこそ「軍人」という存在が今日に至っても存在しているのだ。「我々の敵である彼ら」を攻撃するために。
そしてその戦争の歴史を紐解くまでもなく、髪や肌の色が違うことや自分達にない力を持つことは「自分たちと違うもの」として許容しない理由として十二分に足りすぎる。
彼ら自身が許容されなかった存在である事はその身なりから簡単に見て取れる。
親や保護者を持たず、華人のコミュニティの中で弾かれた子供たちが集い、そしてそんな彼らのコミュニティの中でも更に「自分達とは違う色と力を持つ」少年は疎まれているのだろう。
(しかしその力は彼らにとって有益であるから、使ってやっている、という訳ですか)
疎んではいるが、その力は利用できる。だから『仲間に入れて“やっている”』。少年に対する彼らの態度は正しくそうであった。
そして、彼らの前に現れたフェイトという存在もまた、彼らにとって「自分たちとは異なる、不快なもの」であるようだった。
お前のようなお坊ちゃんが何の用だ、と。意訳すればそのような言葉を、既に投げつけられている。
敵対的な視線や言葉、そして一見して華奢で貧弱そうに見えるフェイトに対して暴力を辞さないだろう態度。それに怯えて逃げ去りでもすれば、彼らは満足であっただろうが。
「――自分達は彼よりも優位なのだと、そうして満足しているのですね。自分よりも劣っている存在があるということは、安心できるものでしょう?」
物怖じどころか。不遜に笑みすら伴って、ブラッドレイの猟犬の仔は、彼らにそう言い放ってみせた。
「それしか知らないというのならばそれ以外を教えて差し上げようかと思っていたのですが、どうやら違っていたようです。仮に彼が咎められたとしても、あなたたちは彼を助けようとは思わない。仲間などではないのですから。彼は、あなたたちがリスクを伴わずして目的を達成するための手段であり、あなたたちの自尊心を満足させるための道具なのですね」
「ああ?」
「そうしてあなたたちが下に見ている彼よりも、あなたたちは余程卑怯で卑しく劣って見えますよ」
それは正しく挑発であった。
己は危険を冒さず一切の責を負わず、他人を使って利を得ようとする行為が。使うものに危険が迫れば容易く切り捨てて自分は何も失わない、それを是とする精神がフェイトにとって最も唾棄すべきものであったのだから。
生きることは、それ自体が既に死との戦いだ。力なき人間も能力者も来訪者も、いかなる立場であったとしてもそれは全く平等に同じだ。
そして彼らの戦い方は、フェイトの最も嫌いな戦い方なのだ。
ゆえにフェイトは、彼らに対して喧嘩を売った。
数十枚の硬貨が地面に叩きつけらればらばらと散る。フェイトが自らのポケットからそれを掴み出し、地に落としたものだ。
集めれば10ユーロ程度はあるだろうそれを見て、少年達はざわめく。
フェイトの正面に立っていた背の高い少年が、怒りを露に低く唸る様な声を上げた。
「てめえ、何のつもりだ」
「……拾ったらいかがですか?」
路地裏で生きる彼らの尊厳はいたく傷つけられたであろう。そうなることを知っていて、フェイトはわざとそれをした。
既にフェイトは、彼らに対して充分に腹を立てている。
しかし彼らは、フェイトの考えていたそれよりもずっと下にいたようだった。
「……星虎(シンフゥ)!」
名であったのだろう。英語圏では耳慣れない単語に、おどおどと前に進み出たのは金髪の少年だった。
地面に這いつくばって硬貨を拾いはじめる少年のその姿に、フェイト=ブラッドレイは。
(こんなものは、人間の生き方ではないでしょう……!!)
野良犬にだって、野良犬の誇りがある。
これは犬にも劣る生き方だと――そう、確信した。
【Vulgar than stray dog=野良犬よりも低俗な】
20120702
卒業生 20歳
魔剣士×カースブレイド
・義兄弟ズの兄貴分の方
・お兄ちゃん
・粋と傾奇の和風好き
シン=インデックス(b55425)
高3 18歳
フリッカースペード×巡礼士
・義兄弟ズの弟分の方
・馬鹿わんこ
・無駄に育ってる
フェイト=ブラッドレイ(b47222)
卒業生 19歳
貴種ヴァンパイア×ゾンビハンター
・吸血軍人
・猟犬部隊部隊長
・義兄弟ズとはなんか腐れ縁
・現在、英国陸軍士官学校に在籍中。
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