忍者ブログ

シルバーレイン(TW2)にて活動中・朱鷺村伊鳥とその弟分と隊長のブログ

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Otherwise can't relief
リアルタイムイベント「吸血鬼艦隊」後の話。
エレインの死を悼んで。
誰かの仇討ちや、正義のためや、仲間や世界を守る為に戦っていた生徒たちは、
きっと戦没者や、仇を討てなかった仲間の死を悲しんでいたのでしょうが。



「Otherwise can't relief」

 12月の夜は、寒かった。

 肉体年令があと十五もあれば、酒でも呷るところなのだろうか。
生憎熱い紅茶くらいしか、手にできるものはなかった。

「よ、お疲れさん」
 振り返れば此度の戦争で久々にタッグを組んだ相棒の姿。
「しッかしお互い散々だッたな、あんなじゃァ戦った気がしねェや」
「そういう戦場だと理解の上での出撃したでしょう」
「まァそうなンだがよ。お前ェさんだってあれじゃ前に出た意味がねェ」

 敵50人に対して、味方6名の戦場など、本来ならば死地でしかない。
今彼らがこうして会話が出来ているのも、そもそも目立った外傷さえないのも、全ては『生命賛歌』の恩恵ゆえの事だった。
そんな「生命賛歌」を必要とする大規模な戦争の時、射撃手であり後方に控えていられる筈のフェイトは誰よりも前に出る。

 それは彼の矜持のようなものだ。
父祖の代より軍人として人間社会に紛れてきた吸血鬼、ブラッドレイ。
その末子であるフェイト=ブラッドレイは己の血統を誇り、父祖の生き様を誇る。
故に彼は、同属の吸血鬼が用いるレイピアもマントも、その技であるスラッシュロンドも好まない。
彼の武器は二挺拳銃とバレットレインだ。けれどその技は、乱戦の中では味方が壁になって当たらない。
だから最前線に出る。ただ弾幕の雨を浴びせるためだけに、本来適さない壁役を買って出る。
 そして彼が自ら吸血を行った――従属とした伊鳥もまた、彼の同類と呼ぶに相応しかった。
フェイトと同属の貴種ヴァンパイアがレイピアを用いた戦いを得意とするように、従属のヴァンパイアならば相応の武器を用いた戦い方がある。
それはチェーンソー剣であったり血を啜るグローブやナイフであったりするが、伊鳥が振るうのは刀だけだ。
軍帽と軍用コートを纏い二挺拳銃を手にするフェイトと、傾いた和装で日本刀を振るう伊鳥。
装いこそ一見してちぐはぐだが、彼らはその狂的な性質故に相性は良かった。

 そもそもが、戦いを愛し殺しを咎められぬゴースト相手に戦争をする為だけに日本へ来たフェイトが、その途中で見つけたのが伊鳥である。
フェイトが戦争のために探し当てたのが、伊鳥の家族を殺して、死によって法的な処罰の手から逃れた者たちのリビングデッドで。
世界の神秘の事など何も知らなかった伊鳥に気まぐれで復讐を唆し、その手段を与える為に従属種とした。
そして目的を遂げた伊鳥は、気まぐれで己の運命を弄んだフェイトを恨んだり嘆いたり悲しんだりするような真っ当な感情を捨ててしまったのだ。
家族の仇を斬り殺したその刀を、斬ったその感触だけをよすがに、フェイトの戦争につきあって、その中でまたゴーストを斬り殺す。
今となっては従属種でなくなることもできる彼が、それをしないのは、貴種の血が彼の傷を癒すからという理由でしかない。
従属種の本業能力、従属再生を活かすため。いわば便利な献血パックと同じ。
フェイト同様の学園にいる貴種のことも、そんな風にしか思っていない。
復讐を果たして人としての自分は死に、今の自分はその皮を被った鬼なのだと伊鳥は口にする。
老いた能力者に発露するそれを「見えざる狂気」と呼ぶなら、彼らのそれは白日の元に曝された狂気と薄紙一枚隔てた場所で立っている。


 寒空の下、白い息を吐き出しながらフェイトがふと呟いた。
「――エレイン嬢が、亡くなられたようですね」
「……らしいねェ。あのお姫ぃさんがいたのは俺らたぁ別の戦場だ」

 吸血姫エレイン。そう名乗っていた、強硬派と呼ばれる吸血鬼の一派に属する貴種ヴァンパイアの少女。
味方の振りをして欧州へ渡った学園の人間を欺き、人狼種同士の殺し合いを誘発させた悪女、だった。かつては。
捕らえられた彼女は決して屈さず、学園は彼女の処遇を生徒達に委ねた。

「処刑」か、「解放」か、「幽閉の続行」か。

 小学生から、まだ二十歳にも満たなかった少年少女たちに、彼女の命の行方を決めさせた。
「あの時、どうしました」
「俺ァ鬼だぜ、慈悲なんざ期待すんなィ」

 無回答を選ぶものもいた。
それは大局の流れに逆らわない、という意思表示。
そして大局…生徒達の大半が、彼女を生かして解放する事を選ぶだろうと検討はついていた。
学園は人命をた易く奪える組織ではないとわかっている。

「こうなる事を予測していたなどとは、口が裂けても言えません」
「俺もだよ。あン時ゃ“例え敵でも命を奪うのはよくない”なんて抜かしてる奴らが気に食わなかッただけさ」

 ――彼らは知っている。
死よりも辛く苦しい、地獄の如き生が有る事を。
「殺さないで」ではなく、「殺してくれ」と嘆願する生が有る事を。
 捕らえられたあの時、彼女は既に死を望んでいた。殺してくれと願ったのだ。
けれど学園は彼女は無傷で解放した。
恐らくはそれが、彼女の組織における信用と地位を地に落としたのだろう。
 二度目に彼女が姿を見せた、『原初の吸血鬼』がはじめに現われた戦争の時には、もはや彼女には威信などなかった。
それでも学園の能力者達は、彼女を倒しても殺しはしなかった。
 そしてこれが三度目。自力では海を渡れない原初の吸血鬼たちが、巨大空母に自らの城を作り出して海上から攻め入った、戦争。

 今日彼女に勝つことが出来たならもう殺してもいいのではないかと、フェイトはそう思っていた。
捕らえられた時と同様に死を望むのか、それとも生きたいのかが知りたかった。
そしてまだ生き足掻くというなら見逃し、死を望んだなら今度こそ殺してやるべきだろうと。

 けれどもう、彼女は壊れていた。そうとしか言えない状態だったと、伝達を受けた。
「『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ『教育』は嫌だ」、と。
 何度も何度もそう繰り返して。
「何もかもお前たちのせいだ」
 そう叫んだのだそうだ。

 彼女には。
いつからだっただろう、
かつて名乗った、「吸血姫」という名すら残っていなかった。

 ――殺してくれと嘆願する生を知っている。死ぬよりも地獄に近い生を、知っている。
学園によって永らえた彼女の生は、死を願う地獄に他ならない。
「……だから生温りィ」
 あの時生かした事こそが、彼女を苦しめ壊した原因だったなら。
彼女を望みどおりに処刑する事こそが、正しかったのか。

 歴史にifはない。

 過ぎ去った過去の、異なる選択を選んだ世界を見る事は、運命予報士にさえ出来ない。

 失墜した彼女の、それでも傍にいた従属種が言ったという言葉を思い出す。
「今が不幸せでも、きっと幸せになれる」
 不幸だったのだ、彼女は。生かされた為に、不幸になったのだ。
その面影すら確認したくなる程に変わり果て、彼女は戦う前から満身創痍だった。
 彼女に行われた『教育』という名の拷問は、原初の吸血鬼たるオクタンスという女の手によるものだ。
そして、彼女が『教育』され続けたのは、殺されないのは敵に通じているからだという疑いを晴らせなかったせいなのだろう。
魔女裁判と同じ事だ。疑いを晴らすには、殺されるしかない。

 全ては仮定だ。
けれど何と辻褄の合う仮定だろうか。
それが真実ならば。

「彼女を壊した責任は我々にあると、そう考えることができます」
 戦うたびに、倒しても殺さない事を徹底してきた。非殺という温情が、彼女を壊した。
そもそも尊厳死という彼女の願いを却下し、自己満足な優しさで何もせず生かして解放したのだ。
――恨まれても当然の生温い、そして残酷な優しさが、彼女の心を壊すに至った。

「……く、くっくくくく、きっひひひひひははははははは!」
 伊鳥が奇怪で不気味な笑い声を揚げる。
それが「狂いたい時」の癖だと、フェイトは長い付き合いで知っていた。
人間の言葉など通じない、本当に意志疎通の不可能な狂人になってしまいたいと思った時、彼はこうして笑うのだ。
「あァ、ああ残酷だ、本当に酷いッたらねェぜ、何て残酷な組織だろうなァ俺たちのいる、この銀誓館ッてェなァよ!!」

 伊鳥もまた、壊れたいのだ。
彼は常に真の狂人になりたがっていながら、紙一重の正気を捨てられずにいる。
それは彼が復讐を為した時からずっと患っている病のようなもので、そして病のように彼自身苦しんでいる。
狂ってしまいたいのに、完全にそうなってしまうことが出来ない。その痛みを紛らわせるように、笑う。
狂って、壊れて、もはや死によってでしか救えない、そんな存在に成り果てて、そして殺されることが彼の望みなのだ。
『そン時ゃさっさと殺してくれや、他人様に迷惑かける前によ』
 ――いつか壊れたら、死によってしか救えない存在と成り果てたら。
学園の誰かが、自分を殺してくれるだろう。

 彼女のように。
けれどひとたび「温情」をかけられたなら、望まぬ生に縛られ続ける。
 彼女のように。

 彼女は不幸だと、その従属は言った。そして、いつか幸せになれる、とも。

 その幸福は、もう死によってしか齎されないものだったのだろう。
もしもまた彼女を生かせば、彼女はまた「教育」されていただろうから。
あるいはあの時尊厳死を奪われた時から、彼女の幸福は、死にしかなかったのかもしれない。

 学園に捕われたあの日から、彼女は死によってしか救えない存在となっていたのだとしたら。
救済の道を悉く断ち切っていった、銀誓館学園という組織は。
「確かに残酷、だったのでしょうね」

 かつて捕われた時、彼女は穏健派貴種の筆頭たる彼女の従兄弟、アルバートにこう言ったという。

『誰もが、あなたのような生き方が出来るわけじゃない』

 確かにそう、彼女にはあの生き方しか出来なかったのだ。
それ故に、残酷な優しさで生かされた彼女には、不幸の螺旋を転がり落ちてゆく運命しか残されていなかったのだ。
そして彼女は、その不幸の向こうにしか幸福を見出せなかった。
だから、壊れた。

「ならば……今彼女は、幸福なのでしょうか」
 救われたのでしょうか。
死によってしか救えない苦痛から。

 死者の出ない戦争はない。
そもそも、この戦争に至った貴種たちの『ゲーム』を阻止しようとして帰らぬ人となった者がいて。
そしてその仇を討つ事叶わず、オクタンスを倒すことも叶わず。
今も港への上陸を許してしまった敵の末端を孅滅する為の作戦が練られている最中だ。
どうして勝てたのかさえ、何を以て勝ちと言えたのかさえわからくなるような、苦い勝利。
祝杯をあげる者よりも、死者を悼む者達の方が多く感じるのは、そんな苦い勝利のせいだろうか。


 同じ貴種ヴァンパイア、というつながりしかないけれど。

 顔も知らぬ学園の生徒よりも、今のフェイトにとっては身近な存在であったから。
一時、悼むことにした。
伊鳥はまだ、笑い続けている。
或いはそれが彼の追悼であるのかもしれない。
彼女に苦痛の生を与えた銀誓館の、残酷な優しさを嘲笑う事が。
フェイトは訊かない。壊れた振りをしている伊鳥には、何を言っても無駄だと知っているから。


 だから黙って、彼女の死を悼んだ。


 ――エレイン。
あなたは幸せになれましたか。
かつてあなたが望んだ死は、今日、ようやく叶えられた。
それを得られたあなたは、今、幸せですか。

 せめて、静かに眠れますように。
もう誰もあなたを傷つけない、死という安らぎの中で。

 

【Otherwise can't relief=それ以外では救えない】
20090122

PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
  
プロフィール
朱鷺村・伊鳥(b47332)
伊鳥IC
卒業生 20歳
魔剣士×カースブレイド
・義兄弟ズの兄貴分の方
・お兄ちゃん
・粋と傾奇の和風好き

シン=インデックス(b55425)
シンIC
高3 18歳
フリッカースペード×巡礼士
・義兄弟ズの弟分の方
・馬鹿わんこ
・無駄に育ってる

フェイト=ブラッドレイ(b47222)
フェイトIC
卒業生 19歳
貴種ヴァンパイア×ゾンビハンター
・吸血軍人
・猟犬部隊部隊長
・義兄弟ズとはなんか腐れ縁
・現在、英国陸軍士官学校に在籍中。
―――――――――――――― この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、義兄弟ズ背後が作成を依頼したものです。  イラストの使用権は義兄弟ズ背後に、著作権は「京作」「寛斎タケル」両絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
カレンダー
03 2026/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
最新コメント
ブログ内検索
Copyright ©  -- 繚乱FLAGS --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by petit sozai emi / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]