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シルバーレイン(TW2)にて活動中・朱鷺村伊鳥とその弟分と隊長のブログ

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Distortion not problem
長ぇよって思ったのでこっちも分けます。
【You have the right to that】第一話分。
日本編、あるいは伊鳥編。
時間的には英国編から数年後、今から六年と少し前です。

作中登場の男性は一般人ですが、この立場にある人物の持つ常識ならばこうなるだろうとの判断で書いております。

「Distortion not problem」

「こいつがその事件の記事だ」
 煙草の脂が染み付いた事務所の応接間で、よれたスーツの男はフェイトにスクラップブックを差し出した。
フェイト=ブラッドレイが屋敷を出、単身日本に渡って数ヶ月後のことである。
彼はこの数ヶ月の間、一人各地を転々としながらゴースト狩りを繰り返していた。
日本とはなんと楽しい場所だろうか。
本国にいた時と違って、戦争相手に事欠かない。
生命の理を越えた死霊を、屍を蹂躙し殲滅する。彼らの領域を侵し、再び殺す。
戦いを愛してやまぬ吸血軍人は、それを心から喜んでいた。
――軍人とは、侵して殺すものであると。

 戦場を見つける方法は、難しくなかった。
所謂「情報屋」と呼ばれる輩と渡りをつければいい。
それが常識的であろうと非常識的であろうと、金になりさえすれば情報を売ってくれる。
如何に彼らが世界結界の影響を受けていようとも、彼らにとっては「歪められた真実」であっても構わない。
真実が歪められていようと情報は情報なのだから、重要なのはそこからこちらが真実を引き出せるかどうか。

 フェイトが求めた情報は「ここ最近発生した、未解決のまま捜査が進展する様子の見えない殺人事件」であった。
殺人、という大きな事件が起きているにも関わらず、警察の捜査が進展しない。
それは世界結界が作用した結果だ。起きた事件の捜査が行われないことは「常識的に」ありえない。
だからこそ、常識の力を根源にする世界結界では捜査を行うことまでは止められない。
しかしそれがゴーストが起こした事件であるならば、真相に近づこうとすればするほど捜査は難航していく。
けれど今フェイトの目の前にいる男のような人間は、ただの一般人とは違う考え方をするのだ。
『捜査本部に圧力がかけられているから、捜査を進められないのではないか』と。
彼らはそれがゴーストなどという存在によるものだとも、世界結界などというものも知りはしない。思いつきもしないだろう。
それでも彼らは、彼らの常識でその情報を齎してくれる。
「手口は同じだな。一人歩きの相手を狙って、よってたかってだ。鞄や財布は漁られた形跡もないらしい」
「暴行すること自体が目的、という事ですね」
「この町は徒党組む悪童連中が多くてな。市のお偉いさんトコのガキもいる。捜査が進まねえのはそのせいじゃねえかと、俺たちは読んでる……お偉方が圧力かけてんじゃねえかとな」
「一理はあります」
 それでは僕が楽しめないのですが、と。フェイトは口には出さぬまま、そう思った。
犯人が生きた人間ならば、それは己の領分ではない。それは非戦闘員の虐殺と同じ、軍人として恥ずべき行為だ。
「……春先の時はそれでもタレコミがあったんだが、今回はどこの連中も知らねえ、自分たちじゃねえの一点張りだ。ここまで徹底されてんのも珍しい、普通ならどっかから解れが出てくるものなんだが」
 恐らくはそれこそが世界結界の影響。それならばこれは、アタリだと口角を上げ。
ふと気がついて、フェイトは情報屋に聞き返した。
               ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「春先? ……その時も同様の事件が、あったのですか?」

「ああ、同様と言うには桁違いに悪質な事件だったがな。やったのはそんな悪童連中どもだった」
 町では誰もが知る事のできたものだから情報料は取らない、と投げ渡されたスクラップブックには、当時の新聞記事の切り抜きが収められていた。

 一家惨殺。
町の不良グループが起こしたというには、不釣合いな程大きな事件だ。
「被害者の一家は至って普通の家庭でな、少しの間だが騒ぎになった。……犯人はすぐに割れたがな」
「押し込み強盗ですか?」
「それならまだマシだったんだろうがな。金目当てでもねえ。犯人のガキどもがクスリも何もやってなかったってのが信じられねえぐらいの、ふざけた理由だ」
 コンビニで馬鹿騒ぎしてたのを店員の姉ちゃんに注意されたのがムカついたから、だとよ。

 被害者一家と彼らの接点はただそれだけでしかなかったのだという。
注意した若い女性店員が、被害者一家の長女であった。
なめられて腹が立つ、家をつきとめて乱暴してやる、と息巻いて語っていたのだと、話を聞いた不良仲間でさえ事件の大きさに恐れをなして証言に応じた。
若い女性であったというから、勝手に一人暮らしと判断したのだろうか。
自宅まで尾行し、勢いで押し入ったはいいが両親が在宅だったとは思わず、そのまま全員殺したのだろうという。
金目の物は一切奪われていなかった。ただ一家は突然押し入ってきた男達に、訳もわからず殺された。
そしてそれは確かに「惨殺」と言う言葉に忠実な殺され方だった。
「現場写真も見たし、報道記者だのからも話を聞いたがな。どれもこれも一撃で死ねるような傷を、滅多刺しに滅多打ちだ。気が済むまでやった、としか言いようがない」
 サンドバックやパンチングマシーンに対して憂さを晴らすのと同じように。あるいは、自分たちが人間を殺せる暴力を持っていることに酔うように。

「日本は水と安全が無料な稀有な国だと祖国では言われていたのですが」
 フェイトも目の前の男も、後者を信じていたならばこんなことをしてはいないだろうが。


(……それにしても)
 そこまでの事件で、被害者は何の怨恨も残さなかったのだろうか。
強い残留思念、あるいは地縛霊と化していてもおかしくない。
今起きているという事件は現場から考えても地縛霊の仕業ではないだろうから、それとは別口になるのだろうが――。
 事件の起こった場所に興味を抱き、フェイトはスクラップブックを捲る。
記事の中には、家の写真と住所が書かれたものがあり、そして。
事件の顛末もまた、記されていた。

「犯人が、事故死したというのは……これは、確実な情報なのですか?」
 情報屋は渇いた笑みを漏らして紫煙を吐いた。
「ああそうだ。犯人特定も早かったが、何せ仲間内からのタレコミもあった……野郎どもも嗅ぎつけられてることに気づいて逃げようとしたんだろうよ。警察が確保に向かった時には、奴ら町外れで死体になってやがったって話だ」
 逃げられたと言えば、逃げられたんだろうよ。地獄にだがな――
「警察も大失態だ。だからだろうな、デカいヤマだった割に、捜査本部は早々に縮小されちまった。遺された長男坊も可哀想に……頼みの警察は仇をとってくれねえ。裏切られたような気分だろうよ」
 それは男にとっては余談のようなものだったのだろう。
けれどフェイトにとって、それは最も重大な話だった。
「待ってください。この事件の捜査も、今回と同様に続くべきところから進展していないということですね?」
 半年も経過していない事件であり、しかも今回の事件との関連性は少なくない。容疑者とされる者の範疇も、金銭目的でなく暴行自体が目的と思われるところも。
ならばその事件は洗い直される筈だ。捜査が縮小されるのは、余りにもおかしい。
「春先の事件と今回の事件……繋がってると、そう言いたいのか?」
「僕個人の考えではありますが、可能性は高いでしょう。調べるのならお気をつけください。現在進行中の事件同様、隠匿されようとしている情報です」
 それは男には抗えない世界結界によってだが、情報屋を生業とする以上、彼は首を突っ込むだろう。それを止める権利は、フェイトには無い。

「それから一つ、追加で買いたい情報があります。――生き残りがいると仰いましたね?」
 『遺された長男坊も可哀想に』と。この男は確かにそう口にした。
遺族の情報は警察によって秘匿されている。これは、無料でとはいかないだろう。
何故それを、情報料を払ってまで知ろうとしたのか。

 フェイト=ブラッドレイは己の名に用いられた、運命という言葉を好まない。
それは偏に運命論というものが「全ての事象は過去から未来にいたるまで、予め決められたものである」と言うものだからだという、ただそれだけの理由なのだが、それでも好まないのは事実である。
 だから彼はこの時の己の行動に――自分がそれを口にした理由に、それを知ろうとした理由に、名前をつけていない。
運命とは呼びたくないからだ。

 フェイトは問うた。
代償を払う価値のない情報だと考えながらも、知る為に問いを口にした。

「事件から生き残ったという、彼は。今もこの町にいるのですか?」

【Distortion not problem=歪んでいても構わない】
20120522

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プロフィール
朱鷺村・伊鳥(b47332)
伊鳥IC
卒業生 20歳
魔剣士×カースブレイド
・義兄弟ズの兄貴分の方
・お兄ちゃん
・粋と傾奇の和風好き

シン=インデックス(b55425)
シンIC
高3 18歳
フリッカースペード×巡礼士
・義兄弟ズの弟分の方
・馬鹿わんこ
・無駄に育ってる

フェイト=ブラッドレイ(b47222)
フェイトIC
卒業生 19歳
貴種ヴァンパイア×ゾンビハンター
・吸血軍人
・猟犬部隊部隊長
・義兄弟ズとはなんか腐れ縁
・現在、英国陸軍士官学校に在籍中。
―――――――――――――― この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、義兄弟ズ背後が作成を依頼したものです。  イラストの使用権は義兄弟ズ背後に、著作権は「京作」「寛斎タケル」両絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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