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シルバーレイン(TW2)にて活動中・朱鷺村伊鳥とその弟分と隊長のブログ

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My dear
初っ端から前に言ってたのとタイトル違うとかいうね!
実質「Please need me in long」の第一話なんですが、全部まとめるには長くなりすぎました。
01.02…とかやってったら各話の長さがまちまちすぎるとかになりそうなんでこうしました。

英国編(シン&フェイト編)そのいち、もしくは序章。

「My dear」

 ――イングランド、ノーフォーク州。
広い田園地帯に代表される、美しい自然を有するそのカウンティは観光地としても有名である。
都市に住まう者が別荘地として求める事も少なくないそんな町の片隅。
緑に囲まれた見晴らしの良い場所に、その家はあった。

 新しく建てられた、小さいけれど趣味の良いその家は別荘地ではなく、とある老人の終の住処であった。
大樹が年輪を刻むように、己の生きた証に相応しい幾つもの皺を刻んできた顔が、ふと微笑む。
彼の纏っていた厳しく気難しそうな雰囲気が、柔和なものに変わる。

 老人の視線の先には、花束を抱えた少年の姿があった。

「お久しぶりです、インデックス中将」
 まだ変声期を迎えないボーイソプラノ。
白い花束と相俟って少女に見紛いかねないその姿に、老人はしかし懐かしい歴戦の戦士の面影を重ねた。
「フェイト君。…大きくなったな、会うたびに軍曹に似てこられる」
「光栄なことです。祖父があのような状態でなければ、自らこちらに参ったでしょう」
 お受け取りくださいと少年が差し出した花束は、白い雛罌粟。
それはこのノーフォークを象徴する花でもある。
「退役祝いと、新築祝いです。お疲れ様でした、そして中将の憧れの地で幸がございますよう」
「…君が士官学校に入学するまではと、そのつもりではあったのだがね」
「お許しを。…それにはあと、五年はかかってしまいます」
 困ったような笑顔が、老人の古い記憶の中のそれと重なった。


 老人――ハロルド=インデックスは、退役軍人である。
彼はかの大戦に、英国陸軍の兵士として参戦していた。
島国であり、故に空軍海軍を主体とするこの国の軍において、陸軍は決して花形とは言えなかったが。
彼はそこで、生涯忘れられえぬ戦友を得た。そして、永遠に歴史に隠蔽されるであろう真実を知った。

 大戦中の英国陸軍の交戦記録を紐解けば、そこに「まやかし戦争」という項目がある。
ポーランド侵攻の報を受けた英仏両国がドイツに宣戦の後、フランス・ドイツ国境及びフランス・ベルギー国境沿いに展開された西部戦線。
しかしそれより約八ヶ月もの間、この西部戦線ではおよそ戦闘と呼べる行為は両軍共に行われず、国境でのにらみ合いに終始。
兵士達の士気も低下し、実際に独軍がフランスへ全面攻撃を開始するまでは事実上の休戦状態にあった、と。

 けれどそれが現実ではなかったことを、ハロルドは知っている。
確かに兵士達の間での戦闘行動はなかった。ただしそれは一般兵士の間では、だけだ。
歴史には決して残らず、そしてその場にいた多くの兵士達の記憶からも忘れ去られた戦いが、実際には存在したのだ。
その場に居合わせたハロルドとて、本来ならばそれは夢と忘れ去っていたかもしれない。
けれど彼はそれを忘れまいと努力してきた。忘れる事を、ハロルド自身が許さなかった。
その戦いの渦中に確かに存在していた、彼を。少年の祖父、ブラッドレイ軍曹を。

 ブラッドレイ軍曹は勇猛なる軍人であった。
その外観は線の細い、美しいとさえ呼べる青年だった。
しかしあらゆる兵士、将校、ブラッドレイ軍曹の戦姿を一度でも見たものは、誰もが彼につけられた仇名に納得したのだ。
「ブラッドレイの猟犬」或いは「ブラッドレイの狂犬」。
生まれながらの戦闘民族、と言う者もいた。軍曹はそれに笑って返したものだ。
『私はもとより、生まれながらの軍人だ』と。
 まだ機関銃も戦闘機も戦車もなく、戦争が大砲と馬とぶつかり合う人間同士のものであった時代から、ブラッドレイ家は軍人を輩出してきたのだという。
英国軍人の血を脈々と受け継ぐブラッドレイ一族。
軍人になるべくして生まれ、そして軍人として戦線に立つ事。それが私の誇りであり喜びであるのだと、軍曹は語った。
そしてハロルドは、軍曹に流れ受け継がれてきた血が、軍人のものだけでないことを知っていた。

 ――吸血鬼。

 吸血軍曹、フィオン=ブラッドレイ。
それが大戦当時は小隊の伍長に過ぎなかったハロルドの上司、ブラッドレイ軍曹である。

 あの西部戦線。独軍には一般将校の他に「怪物」と呼ぶに相応しい兵士が紛れていたのだ。
それは蝙蝠を操り、または猟奇的な武器を手にした吸血鬼。そして炎や水、氷や植物を操るような超能力者たちによる混成兵団。
彼らによって英国海外派遣軍は少なくない痛手を受けた。
そしてそんな超能力兵士の存在に対抗したのが、フィオン=ブラッドレイ軍曹たち。
彼らもまたそれぞれに特殊な能力を持ったものであり、その多くはこの戦争の為に雇われた者たちだった。
そんな寄せ集めの傭兵であった彼らの指揮を執り、また自身も前線で戦っていたのが吸血軍曹その人であった。
ハロルドは、何の因果かブラッドレイ軍曹の近くでその戦いを見ることとなった。
ただの人間であったハロルドに出来た事などせいぜいが衛生兵の真似事だったが、しかしその八ヶ月間の中で、次第にブラッドレイ軍曹と親しくなっていったことは間違いない。

 浴びせられる炎をものともせずに逆に敵兵へと弾丸を浴びせかけ、敵の吸血鬼と同様に蝙蝠を使役して戦う上司を、ハロルドは何故か恐ろしいとは思わなかった。
吸血鬼が血を吸って仲間を増やすものだと、聞き知っていたそんな伝承を頼りに、軍のため、あるいは彼の為に。自ら人であることを捨て

ても良いと考えたことすらある。
しかしブラッドレイ軍曹は笑ってそれを拒んだ。
『確かに私にはその力がある。だが伍長、残念ながら君にはその素質がないらしい』
『誰もがそうなれるわけではないのだ、インデックス伍長。私は生まれついての吸血鬼だ。しかし君は人に生まれた。…力は、持たない方がよい事もある』

『私はこのまま歳を経たなら、いつか狂ってしまうのだ。そのように生まれてきた。…この戦いに勝つためだけに、未来ある君にまでその運命を背負わせる訳には行くまいよ』
 歳を経た吸血鬼は。否、歳を経た全ての力あるものは、いつか狂気に陥る運命にある。
『それを防ぐ方法は、未だ見つかってはいない。故に、私はそうなる前に軍役を退き、父祖に倣って棺の中で永遠の眠りにつくこととなるだろう』
 ああ悔しいな、と、軍曹は寂しげに笑った。
『私が眠りについてなお、君は戦い続ける事が出来る。羨ましい事だよ、インデックス伍長』
『もしも叶うならば、私の子を。そしてその子を。君の命が続く限り、きっと私と同じように戦いを愛し、軍人となるだろう我が血脈を、上官として鍛えてくれないか』

 了解しました、このハロルド=インデックス、必ずやその命令に従いましょう。
『これは命令ではないさ、お願いだ、ハロルド』
『…では、我が親愛なるフィオン=ブラッドレイ。私は貴方の願いを叶える事に尽力しましょう』

 それが、彼に託された願いだった。
きっと吸血軍曹はその願いは叶わないものと思っていたのだろう。
確実に両軍に犠牲者を出していた西部前線は、「まやかし戦争」と語られることとなった。
あの戦いで超常に関わった全ての人が、その事実を忘れ去った。ハロルドもまた、それを忘れ去ってしまうと考えていたはずだ。

 けれど終戦後ほどなくして退役した彼のことを、ハロルドは決して忘れようとはしなかった。
そして、願いどおりにフィオン=ブラッドレイの息子を、部下として鍛えた。
父親同様に吸血軍曹の名とブラッドレイの猟犬の名を継いだ彼も、今は眠りについている。
それを老い、中将となったハロルドに報せたのは、今目の前にいる少年だった。
フィオン=ブラッドレイの孫にあたる彼の名を、フェイト=ブラッドレイ。
祖父、そして父から灰色の髪とアメジストの瞳を受け継ぎ、彼らに良く似た…恐らくは近い未来に、同様に軍人となるであろう少年。

(親愛なる吸血軍曹、この子もまたあなたのように、棺の中で眠りにつかねばならぬ運命にあるのでしょうか)
 自分達のような只人には寂しすぎる定めもなお、彼ら吸血鬼という種族は諾々と受け入れ、子を成してゆくのか。
否、あの日彼が言った「羨ましい」という言葉は、その定めを受け入れていれば出て来ないものだろう。
そんな心持ちで少年を見つめるハロルドの心を読み取ったかのように、少年は言った。
「インデックス中将、…言った事がありませんでしたか? 僕は、僕の名前である「運命」というものが嫌いなのですよ」

 運命とは全てが最初から決められているもの。
 どう足掻こうとも変えられないもの。
 運命論とは、そういうもの。

 けれど中将、あなたが祖父を忘れずにいてくださったことは、運命などというものではありません。
定めなどと名乗るものは、何度もあなたに祖父の事を忘れさせようとしたはずです。
けれどそれに抗ったのは、あなた自身の意志ではありませんか。
「変えられたならば、もはやそれは運命とは呼びません。運命は変えられないものなのですから」
 そう語る少年の瞳は、ハロルドが見てきた誰よりも強かった。
……それはハロルドの記憶するフィオン=ブラッドレイのそれをも、凌ぐものだったかもしれない。

 フィオン=ブラッドレイが羨ましいと嘆きながら屈したものに。
フェイト=ブラッドレイは抗い、対峙し、捻じ曲げようとしている。
「君は強い、フェイト君。…君の祖父よりも、もっと強いかもしれない」
「……それは僕には、光栄が過ぎます」
 少年が自身の祖父の戦歴に憧れ、祖父を敬い、祖父を目標としてきたことはハロルドも知っている。
ハロルドは妻を娶りはしたが、子は得られなかった。
代わりに吸血軍曹に連なる子供たちを、我が子同然に思ってきた。
それが棺の中で眠りに就き、親と子との当たり前のコミュニケーションさえ出来ないフィオン=ブラッドレイの願いであり、ハロルド自身がそうありたいと願ってのことだ。
少年がハロルドを実の祖父同様にと敬い懐いてくれていることも理解している。
故に、老いた今のハロルドだからこそ、その言葉は許された。
「…親とは越えるものだ」
 父の背を。祖父の背を。子は見て育ち、そしていつか追い抜いてゆくものだ。
「どうかそれを、私に見せてくれないか」
 我が親愛なる吸血軍曹の血統。我が親愛なる、フェイト=ブラッドレイ。

「ええ、僕は抗いましょう、運命などというものに。吸血鬼の、業などと呼ばれるものに。そして生涯を軍人として終えましょう……それが、父も祖父も望みながら叶わなかった、我らが血脈の憧れであり、僕の目標なのですから」

 生まれながらの吸血鬼にして、生まれながらの軍人。
後に祖父と、父と同様の「吸血軍曹」の二つ名を名乗ることとなる彼は、このとき強く強く、そう言ったのだ。

 

【My dear=我が親愛なる】
20120515

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朱鷺村・伊鳥(b47332)
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・お兄ちゃん
・粋と傾奇の和風好き

シン=インデックス(b55425)
シンIC
高3 18歳
フリッカースペード×巡礼士
・義兄弟ズの弟分の方
・馬鹿わんこ
・無駄に育ってる

フェイト=ブラッドレイ(b47222)
フェイトIC
卒業生 19歳
貴種ヴァンパイア×ゾンビハンター
・吸血軍人
・猟犬部隊部隊長
・義兄弟ズとはなんか腐れ縁
・現在、英国陸軍士官学校に在籍中。
―――――――――――――― この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、義兄弟ズ背後が作成を依頼したものです。  イラストの使用権は義兄弟ズ背後に、著作権は「京作」「寛斎タケル」両絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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